犬の分離不安

犬の分離不安

家にいても飼い主の後ろをついて歩いたり、飼い主の様子を常に気にして動いたりするような犬には分離不安の傾向があります。飼い主がそばにいない不安から生じるトイレの失敗や過剰な吠え、物を壊す等の問題行動が分離不安の症状です。
飼い主の外出を察知し、家を出た後も足音が遠ざかるまでしばらく吠え続ける犬は多いものですが、ずっと続く場合は問題です。普段はきちんとトイレができているのに、帰宅したら家のあちこちで粗相をする、おもちゃの中身の綿やごみ箱のごみが散らばり家具がボロボロ、その上破壊したものを食べてしまうとなれば症状は深刻です。
こうした問題行動は、飼い主が外出して30分以内に始まるといわれています。
また、嘔吐や下痢、炎症を起こすほど足をなめる自傷行為を起こす等、体に異常をきたす場合もあります。分離不安の症状は飼い主にとっても困る行動であり、犬にとっても辛いもので、ストレスは犬の健康にも問題が及びます。

分離不安の傾向をチェック

以下の項目に当てはまるようないわゆる「甘えん坊」な犬は注意が必要です。自分にベタベタなかわいい子と楽観しているかもしれませんが、もしかしたらそれは分離不安かも…

  • 常に飼い主の行動を気にして目で追っている。
  • 飼い主が立ち上がると一緒に立ち上がりついてくる。
  • トイレの中までついてこようとする。
  • ドアを閉めるとカリカリして中に入りたがる。
  • でかける準備をするだけでも緊張した様子でそわそわし出す。
  • 手を洗いに居間を出る等、ちょっと姿が見えなくなっただけで騒ぐ。
  • 飼い主が見える範囲にいるのに、つながれていてそばに行けないとキュンキュン鳴いたり吠えたりする。
  • 外出先等家ではない場所では、飼い主が少しでも離れるとキュンキュン鳴いたり吠えたりする。
  • 留守中、ずっと吠えていたと近所から指摘を受けたことがある。

分離不安になる理由

分離不安になってしまう要因は様々ですが、小さいうちからの体験や習慣の積み重ねでなってしまうケースが多いです。これから子犬を飼おうと思っている場合、あらかじめ分離不安になる要因を知っておくとよいでしょう。

社会化不足
生後3か月頃までの社会化期に、外の世界との接触が少なかったことが考えられる。
散歩に出て外の景色を見て人と触れ合う等の社会的経験が足りない場合、精神の免疫力がうまく形成されない。
飼い主の過剰なかわいがりや甘やかし
愛犬と一緒に過ごしたいと思うのが自然な感情ではあるものの、常にべったり一緒にいるというような過度な密着は犬の飼い主依存へつながる。
怖いことや驚いたこと等があった時、大げさに慰める行為は犬の不安を増大させ、不安や恐怖心が大きくなる。
外出時「行ってくるからね」と声をかける習慣も不安をあおる。
帰宅時も大げさに喜んで慰めることにより、愛犬に留守番は大変なことなのだと認識させ、不安の原因になる。
過度なリーダーシップ
犬の性格によっては依存心や服従心が植えつけられることで、リーダーである飼い主のいないことが不安になる場合もある。
お腹を見せる服従の姿勢、口をつかむマズルコントロール、体罰等の厳しいしつけが合わない犬もいる。
留守中に起きたトラウマ
今まで分離不安の気配を感じられず、ある日から突然問題行動が起きた場合、留守中に何かが原因でトラウマになった可能性がある。
雷や工事の音等、飼い主がいない間に怖いことがあったと考えられる。
加齢による性格の変化
歳をとると不安を感じやすくなったり、認知症になっていたりする可能性がある。
年を取って何か変化が現れた場合、分離不安ではない健康上の問題の可能性もあるので要注意。
飼い主の生活パターンや環境の変化
引っ越し、転職で勤務時間の変更等で成果鵜習慣が変わり、犬が新しい生活に適応できずにストレスを感じる。

分離不安になりやすい犬もいる
生まれつきの怖がり、不安を感じやすいという性格の犬もいます。犬の体格や性格は血統によるものが強く、親犬が分離不安を起こす気質がある場合、その子どもも分離不安になりやすいでしょう。
生まれ持った性格は変えようがありませんが、子犬の内から精神力を鍛える対策をしていくことが大切です。
血統の大切さや子犬の選び方について詳しくはブリーダーさんに聞く子犬の選び方を参考にしてみてください。

分離不安への対策

今犬を飼っていて分離不安の傾向がみられる場合、対処法を知って少しずつ試してみてください。習慣になったことを変えるのは飼い主にとっても容易なことではないかもしれませんが、愛犬のために新習慣を作りましょう。

愛犬との適切な距離感を作る

家にいるときはいつもべったり一緒という状況から、少しずつ距離を置くようにします。話しかける回数や一緒にいる時間を減らし、一人に慣らすトレーニングを始めましょう。サークル内で安心して過ごせるようにお気に入りのクッションやタオルを置いたり、おやつをつめたコングを置いたりしてサークルにいる時間を増やします。
いきなり一人でいる時間を長くとるのもストレスになるので、自然な習慣になるよう徐々に慣らしていくのがポイントです。飼い主も少し寂しいかもしれませんが、愛犬のためにぐっとこらえましょう。

飼い主が率先して平常心を保つ

雷や不意の物音等に驚くことがあっても飼い主は何事もなかったようにふるまってください。飼い主の不安や態度は犬に伝わります。「大丈夫だよ」と言って抱き上げたり呼び寄せたりするのはやめましょう。怖がって寄って来る姿がかわいいのはわかりますが、大げさに怖いものかのようなふりをして甘えさせるのは禁物です。
外出・帰宅時の大げさな別れと再会も控えましょう。外出するときは犬にでかけると思わせないように動きながら準備をし、声かけないのがポイントです。何でもない日常生活の行動の延長かのように外出します。
帰宅時も何事もなく帰り、知らん顔で淡々とした態度でカバンを片づけたりコートを脱いだりします。手洗いうがいなど自分が帰って来たときにする一連の動作を終え、愛犬の興奮も一通り落ち着いてから目を合わせ、普通に接しましょう。このときもいつも通りの接し方をするのがポイントです。
もし、家の中を荒らされているようなことがあっても怒らずに、淡々と片づけましょう。犬は、問題行動を起こした直後であれば叱られた意味を理解できますが、留守中の出来事で時間が経っている場合に叱るのは逆効果です。理由がわからずに叱られても、飼い主への不信感や不安を抱かせることになります。

基礎トレーニングのやり直し
犬の問題行動は、飼い主との関係が犬にとって適切でない場合に多く見られます。関係を改善するには、お座り、伏せ、待て、といったしつけの基礎トレーニングやり直すのが効果的です。1日に2~3回、10分間程度のトレーニングを行うのが良いようです。
トレーニングと言っても厳しい口調で行うのではなく、犬も飼い主もリラックスした状態で楽しく行うのがポイントです。できないからといってイライラして強く当たると逆効果になってしまいます。毎日の義務だと気負わずに、飼い主に精神的・時間的余裕があるときにやってみると良いでしょう。

飼い主の努力で分離不安にさせない

分離不安になりにくい、なりやすいといった個体差はありますが、分離不安にさせないためには飼い主の努力が重要です。かわいいからと言って甘やかしたり、言うことを聞かないからと言って過剰に厳しくしつけたりしてもいけません。犬は人の身も心を温めてくれますが、逆に飼い主が犬に依存するのも良いバランスとはいえないでしょう。
もし、問題行動や体への異常が深刻になってしまった時は、専門家を頼ってください。できれば症状が深刻になる前に、ドッグトレーナーや動物病院等に相談した方が良いでしょう。飼い主や犬の性格に合わせた適切な指導が受けられると思います。犬との適切な関係を築き、お互いに幸せな生活を送りましょう。