家にいても飼い主の後ろをついて歩いたり、飼い主の様子を常に気にして動いたりするような犬には分離不安の傾向があります。飼い主がそばにいない不安から生じるトイレの失敗や過剰な吠え、物を壊す等の問題行動が分離不安の症状です。
飼い主の外出を察知し、家を出た後も足音が遠ざかるまでしばらく吠え続ける犬は多いものですが、ずっと続く場合は問題です。普段はきちんとトイレができているのに、帰宅したら家のあちこちで粗相をする、おもちゃの中身の綿やごみ箱のごみが散らばり家具がボロボロ、その上破壊したものを食べてしまうとなれば症状は深刻です。
こうした問題行動は、飼い主が外出して30分以内に始まるといわれています。
また、嘔吐や下痢、炎症を起こすほど足をなめる自傷行為を起こす等、体に異常をきたす場合もあります。分離不安の症状は飼い主にとっても困る行動であり、犬にとっても辛いもので、ストレスは犬の健康にも問題が及びます。
以下の項目に当てはまるようないわゆる「甘えん坊」な犬は注意が必要です。自分にベタベタなかわいい子と楽観しているかもしれませんが、もしかしたらそれは分離不安かも…
分離不安になってしまう要因は様々ですが、小さいうちからの体験や習慣の積み重ねでなってしまうケースが多いです。これから子犬を飼おうと思っている場合、あらかじめ分離不安になる要因を知っておくとよいでしょう。
分離不安になりやすい犬もいる
生まれつきの怖がり、不安を感じやすいという性格の犬もいます。犬の体格や性格は血統によるものが強く、親犬が分離不安を起こす気質がある場合、その子どもも分離不安になりやすいでしょう。
生まれ持った性格は変えようがありませんが、子犬の内から精神力を鍛える対策をしていくことが大切です。
血統の大切さや子犬の選び方について詳しくはブリーダーさんに聞く子犬の選び方を参考にしてみてください。
今犬を飼っていて分離不安の傾向がみられる場合、対処法を知って少しずつ試してみてください。習慣になったことを変えるのは飼い主にとっても容易なことではないかもしれませんが、愛犬のために新習慣を作りましょう。
家にいるときはいつもべったり一緒という状況から、少しずつ距離を置くようにします。話しかける回数や一緒にいる時間を減らし、一人に慣らすトレーニングを始めましょう。サークル内で安心して過ごせるようにお気に入りのクッションやタオルを置いたり、おやつをつめたコングを置いたりしてサークルにいる時間を増やします。
いきなり一人でいる時間を長くとるのもストレスになるので、自然な習慣になるよう徐々に慣らしていくのがポイントです。飼い主も少し寂しいかもしれませんが、愛犬のためにぐっとこらえましょう。
雷や不意の物音等に驚くことがあっても飼い主は何事もなかったようにふるまってください。飼い主の不安や態度は犬に伝わります。「大丈夫だよ」と言って抱き上げたり呼び寄せたりするのはやめましょう。怖がって寄って来る姿がかわいいのはわかりますが、大げさに怖いものかのようなふりをして甘えさせるのは禁物です。
外出・帰宅時の大げさな別れと再会も控えましょう。外出するときは犬にでかけると思わせないように動きながら準備をし、声かけないのがポイントです。何でもない日常生活の行動の延長かのように外出します。
帰宅時も何事もなく帰り、知らん顔で淡々とした態度でカバンを片づけたりコートを脱いだりします。手洗いうがいなど自分が帰って来たときにする一連の動作を終え、愛犬の興奮も一通り落ち着いてから目を合わせ、普通に接しましょう。このときもいつも通りの接し方をするのがポイントです。
もし、家の中を荒らされているようなことがあっても怒らずに、淡々と片づけましょう。犬は、問題行動を起こした直後であれば叱られた意味を理解できますが、留守中の出来事で時間が経っている場合に叱るのは逆効果です。理由がわからずに叱られても、飼い主への不信感や不安を抱かせることになります。
基礎トレーニングのやり直し
犬の問題行動は、飼い主との関係が犬にとって適切でない場合に多く見られます。関係を改善するには、お座り、伏せ、待て、といったしつけの基礎トレーニングやり直すのが効果的です。1日に2~3回、10分間程度のトレーニングを行うのが良いようです。
トレーニングと言っても厳しい口調で行うのではなく、犬も飼い主もリラックスした状態で楽しく行うのがポイントです。できないからといってイライラして強く当たると逆効果になってしまいます。毎日の義務だと気負わずに、飼い主に精神的・時間的余裕があるときにやってみると良いでしょう。
分離不安になりにくい、なりやすいといった個体差はありますが、分離不安にさせないためには飼い主の努力が重要です。かわいいからと言って甘やかしたり、言うことを聞かないからと言って過剰に厳しくしつけたりしてもいけません。犬は人の身も心を温めてくれますが、逆に飼い主が犬に依存するのも良いバランスとはいえないでしょう。
もし、問題行動や体への異常が深刻になってしまった時は、専門家を頼ってください。できれば症状が深刻になる前に、ドッグトレーナーや動物病院等に相談した方が良いでしょう。飼い主や犬の性格に合わせた適切な指導が受けられると思います。犬との適切な関係を築き、お互いに幸せな生活を送りましょう。