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フィラリアと寄生虫の一種です。フィラリアに感染されておこる疾患をフィラリア症と言います。今の日本では、犬の心臓と肺動脈に寄生する犬糸条虫のことをフィラリアと呼んで広く知られていますが、他にもフィラリアの種類はあります。尚、このここでは「フィラリア=犬糸条虫」としてわかりやすいよう簡単に説明していきます。
フィラリアは犬以外にも感染する
フィラリアは犬への感染が圧倒的に多く、犬の病気のようにとらえられがちですが、猫やフェレットにも感染します。特にフェレットの場合、犬と同程度の危険性があるそうです。
猫への感染はあまりなく、海外の文献によると感染率は予防していない犬の1/10程度とあるようですが、猫のフィラリアはまだ解明されていないことが多く、最近では予防をした方が良いと言われています。猫のフィラリアは犬と違って成虫の寿命が2~4年と短く、メスオスどちらか一方だけなのでほぼ増殖できないようです。数が1~3匹とかなり少ないこともあり、犬ほど危険視されていません。しかし、数が少ないとはいえ、感染してしまうと猫の心臓は犬よりもかなり小さいため、重症化してしまう傾向にあります。猫の場合、はっきりした症状が出ず、感染しているのかどうかも判断がつきにくい場合が多く、注意が必要です。
フィラリアは人にも感染しますが、人は免疫を持っているのでフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が体内に入ってもすぐに免疫攻撃を受けて死滅します。滅多にないことですが極稀に人の体内で成長し、肺の中で結節を作ることもあるようで、レントゲンで影が写ったことで手術してみるとフィラリアの結節だったという例が日本でもあったようです。愛犬の健康はもちろん、飼い主側のことを考えても万が一に備えてフィラリア予防はしっかり行うべきでしょう。
フィラリアは、蚊を介して感染します。感染されても、すぐにフィラリア症を発症するわけではなく、なかなか体調の変化には現れません。フィラリアは体内に寄生後、何年もかけてペットの体を蝕んでいきます。フィラリア症が発症してからでは手遅れになることも…基本的にはだんだんと悪化していく病気ですが、突然容体が悪化する場合もあり、命に関わります。
蚊はフィラリアに感染している犬の血を吸うときに血液中のミクロフィラリア(幼虫)を取り込む。
ミクロフィラリアが蚊の中で2回の脱皮を経て感染能力のある感染幼虫へ成長。成長するには25度以上と一定の気温が必要なため、寒い冬の時期は予防はしなくとも良い。
ここでフィラリア予防薬が効果を発揮!この時点で感染幼虫を駆除する。
心臓や肺動脈に行きついてもすぐに体調の変化は現れない。
フィラリアの成虫の影響で体調の変化が現れる=フィラリア症の発症
時間をかけ、見えないところで体をボロボロにされるので、フィラリア症を発症してから気づくことが多い。
尚、ミクロフィラリアが生まれても蚊の体内で成長をしてからでなければ成虫にはなれないため、体の中で成虫が増えることはない。しかし、何も対策を取らないでいるとまた新たにミクロフィラリアを持つ蚊に刺され、フィラリアの成虫が増えて危険度が増す。
フィラリア症は急性と慢性に大別されます。フィラリアに感染してからすぐ現れるわけではありません。初期症状はないともいえるほど、症状が現れるのは感染してから長い時間がかかります。症状は時期や寄生したフィラリアの数にもよりますが、症状が現れたときにはもう手遅れ…ということもあり得ます。徐々に体を蝕む恐ろしい病気です。
長期間心臓にフィラリアが寄生すると循環器系の障害が起きます。徐々に症状が進行すると、肺不全、腎不全等で死に至ることも少なくありません。腹水が見られるようになるともう末期です。余命は幾ばくもありません。感染から末期症状が出るまでは2~3年と言われています。
大動脈に一度に多数のフィラリアが詰まり、血液が流れなくなることによって発症します。慢性症の経過中や、ほとんど症状の出ていない場合でも急に起こることがあります。急性症の場合、一気に容体が悪化し犬は急激に苦しみ始めて1~2週間で死んでしまいます。場合によっては緊急手術で助かりますが死亡率は高いです。
フィラリア症は見えないところで進行していく病気です。症状が現れたときにはもう末期症状で手遅れということにもなりかねません。元気そうに見えても体内ではフィラリアが突然暴れ出して状態が悪化したり、心臓にくっついていたフィラリアが離れて血管に詰まったりして突然死するということもあり得ます。
フィラリア症の検査は血液検査が一般的です。主に、幼虫検査と抗原検査の2つの検査で診断します。要ちゅう検査はミクロフィラリアが血中に含まれていないか、採取した血液を顕微鏡で目視して判断します。抗原検査は成虫が心臓に入り込んでいないか、検査キットで判断します。およそ5分で診断できます。費用は病院によって異なりますが、幼虫検査で1,000~1,500円、抗原検査で2,500~3,000円程度でしょう。
寄生が確認されたら、レントゲンや心電図、超音波等の検査を行います。寄生されている部分の状態を詳しく調べ、今後の治療法を考えます。
フィラリアはシロアリと似ている
シロアリに例えるとわかりやすいかもしれません。家はシロアリに住みつかれると、見えない部分の柱や壁が食い荒らされていきます。それでも表面に現れないので何年間も気づかずに、倒壊寸前もしくは倒壊して気づく…シロアリは駆除できてもスカスカになってしまった柱や壁はもう元の状態には戻りません。部品を交換したり、一から立て直したりするしかないでしょう。
フィラリアも同じく、見た目は変わりないのに、症状が現れた時にはもう体がボロボロ…フィラリアを体内から除去できたとしても、犬は家と違って替えなどできるわけもなく、ボロボロになった体はそのままなのです。
フィラリア症の治療は、基本的に3つの方法があります。どのように治療を進めていくのか、慢性か急性か、犬の年齢や寄生状況等により処置は様々です。病院によっては方法が違うことも多く、方針によっては死んでしまうこともあるので病院選びが重要です。万が一フィラリアに感染していた場合、医師とよく相談して治療をしていきましょう。
慢性症の場合、ヒ素系の薬を投与してフィラリアを殺します。ただし、殺してしまえば便と一緒に排泄される回虫や条虫等の腸管寄生虫と違い、フィラリアは血管にいるため死骸が詰まって症状を悪化させたり、犬が死んでしまったりする場合があります。一度に成虫を殺すと危険なため、2回に分けて注射をし、フィラリアの死骸が白血球によって溶かされ処分されるのを待ちます。死骸がなくなるまで量によっては1カ月以上もかかりますが、その間は絶対安静で、散歩をしたり興奮させたりはできません。犬はもちろん、世話をする飼い主にも相当負担がかかるでしょう。
成虫の量や寄生場所等の理由でフィラリアを一気に殺してしまうと危険な場合、フィラリアの寿命が来て自然と死ぬのを待ちます。フィラリアがだんだんと死んでいくため、血管に詰まる可能性が低いので負担が軽くなります。フィラリアの成虫の寿命は5~6年です。その間、新たなフィラリアに寄生されないように予防をしつつ、フィラリア症の症状を抑えながら過ごすことになりますが、症状の悪化や突然死の可能性があります。フィラリアとうまく共存しても割りと長生きをしたという例もありますが、普段の生活に気を配り、長い間フィラリアの脅威と戦うことになるでしょう。
急性の場合や寄生状況等によっては手術をしてフィラリアの成虫を取り除くことができます。急性の場合はリスクがあるものの手術にかけるか死を受け入れるかという状況に迫られる場合もあるでしょう。手術で全てのフィラリアを体内から取り除くことができれば、思いの他元気になる場合もあります。しかし、犬にとって全身麻酔をするだけでも危険なもので、犬の年齢や体力によっては麻酔から目覚めない、手術に耐えられずに死んでしまう場合も少なくありません。
ただし、どの方法にしても犬の体への負担がかかるのでリスクはあり、とても困難なものです。特に高齢になってくるとできる治療も限られ死の危険が増します。フィラリア症の進行次第では治療が完了したとしても本来の寿命ほど長くは生きることができない可能性が高いです。フィラリアに感染されないように予防をしっかりするのが大事ですが、万が一フィラリアになってしまったら、適切な治療を選択して行い、短くなった命の最後まで責任を持って世話をして大切にしてあげましょう。
フィラリア症の新しい治療法?
最近ではフィラリアの治療に有効的な方法として、ボルバキア治療という方法があります。ボルバキアとは、昆虫やフィラリア等の綿中に寄生する最近の一種です。フィラリアはこのボルバキアに寄生されていて、寄生されていることによって犬の体内でも長く生きていけるといわれています。つまり、このボルバキアを殺してしまえば、フィラリアは勝手に死ぬということです。それに目を付けた治療法がボルバキア治療です。
ボルバキアを消すためにドキシサイクリン系という抗生剤の投与を1カ月、その後2~3ヶ月は休みで1クール。その間、たいていは予防しながらフィラリアの寿命を待つ治療と並行して行います。早ければ1クールから陰転することもあり、長い場合だと数年続けてもだめな場合もあるようです。
ただし、ボルバキア治療はまだ確立された治療法ではありません。抗生剤で具合が悪くなってしまったり、1クールの抗生剤投与を休む期間等の治療方針が獣医によって違ったりするようです。また、行っている病院はまだ多くはありません。とはいえ、ホームページ等でボルバキア治療を行っていると謳っていなくとも、相談をすれば行ってくれる動物病院もあるようです。気になる場合、かかりつけ医や近くの動物病院に相談してみると良いでしょう。
フィラリア症の予防は予防薬の投与になります。蚊を寄せ付けない蚊取り線香等だけでは不足です。きちんと病院で薬をもらいましょう。尚、予防薬にはいくつかのタイプがあります。
フィラリア予防薬は、体内のフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を殺す駆虫薬です。予防薬とは言いますが、フィラリアが体内に入るのを防ぐものではなく、体内に侵入してきたミクロフィラリアを殺して成虫になるのを防ぐという意味で予防薬と呼ばれています。尚、駆虫薬とはいえ、フィラリアの成虫は殺すことができません。
予防薬には種類がいくつかあり、成分も異なるので費用にも差が出ます。ノミ、疥癬(耳ダニ、ヒゼンダニ)、胃腸の寄生虫にも効果があり一石二鳥なものもあります。フィラリア予防薬は安全性が高く、副作用も少ない薬ですが、絶対に100%安全とは言い切れません。とはいえ、フィラリア症になるリスクを考えれば、しっかり予防をしておいた方が良いでしょう。フィラリア予防薬でなくとも、どんな薬にも何らかの副作用があるもの。個体差もあるのでどのタイプのどの薬が愛犬に合うのか、動物病院で相談した上で予防薬を選びましょう。
予防薬を与えていたのにフィラリアに感染!?
予防をしていれば100%フィラリアには感染しません。稀に薬を与えていたのにフィラリアに感染したということもあるようですが、その場合、犬がきちんと薬を飲んでいなかったことが原因と考えられます。体調が悪いときに食べて吐いてしまったり、食べたふりをしてこっそり吐いていたり、口からこぼれていたり、物を隠す犬の習性でどこかに薬を隠して取っておいていたり、飼い主も気づかないうちに薬を摂取できていなかった可能性があります。
錠剤タイプはなかなか食べない犬も多く、おやつタイプでも口からこぼれたり隠したりと油断はできません。薬を与えるときは、様子を見張り、しっかり薬を飲み込んだか確認しましょう。
フィラリア症になる確率は?
フィラリアの予防をしないでフィラリアの感染率は1年目の夏を過ごすと38%、2年目の夏を過ごして89%、3年目の夏を過ごせば92%と言われています。ただし、室内・外や飼っている環境、地域によってもだいぶ差があります。最近ではフィラリア野望に対する意識も高く、都市部では今はほとんどフィラリア症になる犬は少なくなってきたといわれていますが、なくなったわけではありません。自然動物もフィラリア感染し、蚊は風に乗ってかなりの距離を移動するため、都会だからと言って侮れないでしょう。 たとえ、上記の通りよりも感染率が