犬も歯磨きをしてないとヤバイ…歯磨きのやり方や頻度は?いつから始める?

普段、愛犬の歯磨きはしていますか?歯磨きをしないで放置していると歯石がたまり、犬も歯周病になってしまいます。最悪死に至る場合も… 今回は、犬の歯磨きのやり方や頻度を紹介します。歯磨きの習慣がない場合、嫌がるかもしれませんが、少しずつ歯磨きの練習をして愛犬の歯の健康を守りましょう。

犬の歯磨き、してないとどうなる?

犬にも歯磨きは必要です。歯磨きをしないと、口の中の食べかすや汚れが歯垢となり、数日で歯石になって歯周病や歯槽膿漏等の口腔トラブルを引き起こします。

歯垢とは、食べかすをエサにする細菌とその代謝物のかたまりです。歯の表面に見られる白いネバネバした物質で、人間の歯の表面にも見られますね。歯垢は、人間だと20日程度、犬の場合2~3日程度で歯石になります。

歯石とは、歯垢とミネラルが結びついてできた石のようなものです。歯垢に唾液中のカルシウムを含むミネラルが沈着することで石灰化が起こります。そして鍾乳洞のように固い石の層ができていくのです。ザラザラとしているので、歯石があると更に歯垢がつきやすくなってしまいます。
歯垢の内はこするだけでとることができますが、歯石なってしまうと簡単には取れません。先のとがったものでガリガリと削り取る必要があります。

現代のペットとしての犬たちは、ドッグフードを食べ、ペット用とはいえスイーツも食べるようになりました。歯周病の原因となる食生活を送っています。そのため、今では2~3歳以上の成犬の8割が歯周病になっていると言われています。

野生動物も歯周病になる?
犬の祖先であるオオカミ等の野生動物は、自然の生のものを生でよく噛んで食べています。それが自然と歯磨きの役割となっているのです。甘いものを食べることもないので、虫歯になるとしてもごくわずかだったようです。
とはいえ、歯を使っていると擦り減ったり折ってしまったりすることもあります。そこから虫歯になってしまうことはあるようです。歯が悪くなると食べ物を食べることができなくなるので、野生動物が歯を失うこと=死となります。

歯周病になると…

口臭がする
歯垢や歯石の素となる細菌が糖を分解する過程で臭いが発生。
歯茎が赤く腫れる
歯周病菌が歯茎に炎症を起こし、歯の付け根が赤く腫れる。
その他の症状は特になし。
普段から歯茎を観察していないと見逃してしまうような変化。
歯茎が溶ける
炎症が酷くなるとだんだんと歯茎が溶け始める。
歯茎に隠れている歯の根元が露出しては歯がぐらついてくる。
痛み出すとエサを食べなくなったり元気がなくなったりする。
最終的には歯が抜けてしまうことも…
歯の根元に膿がたまる
歯の根元の奥の方で歯周病菌が増えると、そこで溜まって歯の根元の腫れが酷くなる。
目や顎の下まで腫れたり、あごの骨が溶けたりすることも…
犬は痛みを抱えおり、こうなってしまうとかなり危険!

最初は口が臭いな、歯が汚いな程度から始まりますが、放置しておくと大変なことになりかねません。例えば、歯周病菌が血液に入り込み、心臓や腎臓に到達して炎症を引き起こし、心不全や腎不全を引き起こす等、歯周病から死んでしまう可能性もあります。
口が臭いという時点で動物病院に相談しても全く恥ずかしくはありません。犬は痛みをうまく訴えられないので、早めに気づいて対処してあげましょう。

犬も虫歯になる?
人間は歯磨きを怠ると虫歯になってしまいますが、犬が虫歯になることは滅多にありません。なぜかというと、それは人間と犬の口内環境の違いにあります。
虫歯は、酸性の環境下で糖を発酵させて酸を作り、歯の表面の組織を破壊していきます。人間の口の中は酸性ですが、犬の口の中はアルカリ性のため、虫歯菌が繁殖しにくいのです。
また、人間の唾液はデンプンを糖に分解する酵素がありますが、犬にはないので、糖が口の中にとどまることがほとんどありません。
歯の形も、虫歯になりにくい理由の一つです。人間は虫歯菌がとどまりやすいようなくぼみがありますが、犬は尖っていて虫歯菌がたまりにくいようになっています。

犬は虫歯になりにくいとはいえ、ならないわけではありません。犬が虫歯になると、口臭がしてきたリ、歯に穴が空いたり色が変わったり、痛みでエサを食べるのが遅くなったりする場合もあります。
もし愛犬が虫歯になってしまったら人間と同じような治療が必要です。犬の歯の治療は全身麻酔がほぼ必須で、治療費も体への負担や命のリスクも高くなります。
愛犬が歯周病や虫歯にならないために、日々のデンタルケアを心がけましょう。

いつから始める?愛犬への歯磨きのやり方

子犬のうちは、それほど歯磨きを意気込んでやる必要はありません。1日に1~2回程度、スキンシップの一環として歯磨きの練習を行いましょう。成犬になったときに嫌がらずに大人しく歯磨きができるようにすることが大切です。子犬への歯磨き練習は、子犬が家や家族に慣れてきてから始めてみてください。
力の弱い子犬だからと言って体を抑え込んだり無理やり口の中を触ったり、子犬が嫌がるようなことはしてはいけません。歯磨きが嫌いにならないように気を付けましょう。

今まで歯磨きの習慣がない場合、子犬と同じようにまずは口元や口の中を触られることに慣れてもらうことから始めます。次に、ガーゼ等で歯をなでなり磨かれたりすることに慣れてもらい、最終的に歯ブラシを使った歯磨きの習慣を身につけていきましょう。

ステップ1:口の中を触られることに慣らす、歯磨きをされることを嫌がる犬への対処法

歯磨きをできるようにするためには、まずは口の中を触られても大丈夫なようにする必要があります。たいていの犬は、口の周りを触られるのが嫌いです。歯磨きの習慣がない犬の場合、歯を見ようとするだけで抵抗されるかもしれません。
始めは顔や口元を優しく触り、徐々に触る時間を長くします。口の周りを触らせてくれたり、唇をめくって歯を見せてくれたりしたらしっかり褒めてご褒美を与えるのが慣れてもらうコツです。
口に触るのも困難な場合、おやつを握って少しだけ見えるようにして出し、愛犬がそのおやつに夢中になっている間に口を触ってみてください。徐々に慣れてくると、ご褒美なしでも触れるようになってくると思います。
触られることに抵抗がなくなってきたら、犬歯、奥歯の方と徐々に口の中を触られることに慣らしていきましょう。

ステップ2:指や指にガーゼ等で愛犬の歯を触る、磨く

マッサージをするように、歯の表面や歯茎を指やガーゼ等で優しく撫でてみましょう。柔らかく薄いガーゼだとすぐに破けてしまうので、破けにくい不織布のガーゼがおすすめです。指ブラシ専用の歯磨きシートも市販されています。
ガーゼ等は、水やぬるま湯をつけてから撫でやすいように指にしっかり巻き付けてください。緩んできたら犬が口の中で違和感になってしまうので巻き付け直しましょう。

最初は前歯から、徐々に慣れてきたら奥歯の方も撫でていきます。「コラ」「待て」と言いたくなるかもしれませんが、「歯磨きしようね」「いい子だね」と、優しく声をかけ、愛犬を安心させてあげるのもポイントです。
歯を撫でられることに慣れてきたら、少しずつ力入れて歯を磨いていきます。すると歯垢がガーゼにくっついてくるのがわかります。ガーゼが汚れたら新しいものを使いましょう。

歯磨きペースト等を使うと汚れを落とすのに効果的です。犬の好きな味や匂いがついている犬用の歯磨きジェルやペースト等は、喜んで歯を撫でさせてくれるようになる場合もあります。歯に吹きかけるスプレーもあるので、口の中にスプレーさせることも慣れさせると良いでしょう。

ステップ3:歯ブラシで歯を磨く

ガーゼに慣れてきたら歯ブラシを使ってみましょう。初めて見る歯ブラシなので、まずは歯ブラシの臭いをかがせたりなめさせたりして歯ブラシそのものに慣れてもらいます。黙って歯ブラシを持ち、愛犬が歯ブラシを口に入れただけでも褒めてあげてください。
一部分を磨けたらご褒美をあげる等、愛犬が歯磨きをしてくれるようにたくさん褒めてください。あまり嫌がるようであれば、いったん休憩しながら何回かに分けて行うと良いでしょう。

飼い主の感触がある指に巻き付けて磨くことは犬には受け入れられやすいのですが、歯ブラシのような固い異物は極端に嫌がる犬もいるかもしれません。歯ブラシへの移行練習として、スポンジブラシを試してみてください。

  1. 乾いたままだと歯のエナメル質を傷つけてしまうので、歯ブラシを濡らす。歯磨きジェルやペースト等をつけるといい匂いや味がするので口に入れてもらいやすい。
  2. 前歯の外側から、ゆっくりと優しく磨く。
  3. 前歯を磨かれることに慣れてきたら徐々に奥の方へ移動して磨く。
  4. 歯垢がつきやすい上顎の第4臼歯の外側は要注意。長い間歯磨きを我慢できない場合、歯垢がつきやすい場所だけでも磨いてあげると良い。
  5. 歯の裏側も磨く。

愛犬の歯磨きをする頻度

犬の歯磨きをする頻度として、理想は毎食後です。毎食後が無理でも1日1回を目標に、食べかすや汚れはその日のうちにきれいにしてあげましょう。
最低でも2日に1度は歯磨きをしてあげてください。歯垢は2~3日で自分では取れない歯石になってしまいます。そうなる前に歯垢を取り除きましょう。

歯磨きグッズを使ってみよう

ペットショップやホームセンターのペッとコーナー等、今では様々な歯磨きグッズが並んでいます。きちんと歯磨きをしてあげることが愛犬の歯の健康には一番ですが、歯磨きを助ける補助的なグッズもあるので、是非一度見に行ってみると良いでしょう。
ただし、歯磨きグッズを使うときは十分に注意が必要です。犬は口をすすぐことができないので、歯磨きジェルやスプレーは口の中に入り飲み込んでしまうことになります。犬の口に入って飲み込んでしまっても安全なものかどうかしっかり確認しましょう。
また、犬によっては合わない場合もあり、嘔吐したり血尿が出たりしたというレビューもあるので使うときには要注意です。何らかの異常が見られた場合、すぐに使うのを中止してかかりつけ医に相談しましょう。

指につける歯磨き用品(指ブラシ)
指につけて歯を磨いてあげるグッズ。
ガーゼでも良いが、歯を磨くのに適した表面で、指にすっぽりはめて使う専用のものが便利。
歯ブラシ
ブラシ部分が小さく、奥歯の方まで届くもの。人間のものでもOK!
ブラシの毛は適度に柔らかく、すぐにブサブサと毛が開いてこない方が良い。
飼い主が持ちやすく使いやすいもの。
歯磨きジェル、ペースト(歯磨き粉)
犬が好きな匂いや味がするので歯磨きを受け入れやすい。
なめるだけでも口腔内の細菌を抑え口臭を抑えるものもある。
歯磨きガム
噛むことでデンタルケアができる。
あまり噛まないで飲み込んでしまう犬もいるので、硬い大きなかたまりを飲み込む等事故が起きないように要注意。
たいていの犬は喜んで食べるので歯磨きをするよりも楽だが、完全に歯磨きの代わりにはならない。補助のデンタルケアとしては有効的。
歯磨き効果があるからと言って食べすぎると良くないので与えすぎない。
歯磨きスプレー
犬の口に直接吹きかける。
歯に吹きかけて指や歯磨きでこする、というのを継続して行うことで歯石を除去できるという商品もある。
吹きかけるだけだと歯磨きよりも力はないので、歯磨きと並行して使用すると良い。
飲ませるデンタルケア用品
飲み水に垂らして飲ませる。
歯磨きの代わりにはならないので歯磨きも必要だが、口臭の改善に期待できる。
歯磨きおもちゃ
噛むことで歯を磨く効果があり、歯垢を落とすことができる。
木製品等の噛みちぎって食べてしまう可能性がありそうなおもちゃは、天然素材のものや食用OKといった表示があるものを選ぶ。
愛犬とのコミュニケーションを取りストレス解消にもなるが、完全に歯磨きの代わりにはならない。補助のデンタルケアとしては有効的。

歯石がたまっていたら動物病院へ

動物病院では、全身麻酔をかけてスケーラーという先のとがった犬の歯科用器具で歯石を除去し、歯周病の治療を行います。今まで歯磨きをしていなかった場合、たまった歯石を除去し、きれいな歯にリセットすることができるでしょう。
最近では、無麻酔で歯石を除去する動物病院もあります。トリミングサロンでも歯石をとって相当きれいにしてくれるところもあるようです。無麻酔の場合、費用が安く安全にできますが、どうしても犬が動いたり嫌がったりするため歯の裏側や歯周ポケット等の細部まではきれいにできません。
全身麻酔というと怖いイメージがある人も多いですが、歯石がたまって歯周病が進行している場合は、しっかりとした治療が必要です。不安なことは獣医師に相談して治療を進めましょう。

トリミングサロンでの歯磨きの効果は?
最近では、歯磨きを行うトリミングサロンも多く見かけますよね。確かにトリミングサロンでは家でやるよりも上手に歯磨きをしてくれるかもしれません。
しかし、歯垢は2~3日で簡単にはとることができない歯石になってしまいます。トリミングのついでや月1回程度通うくらいでは歯磨きの頻度は足りません。トリミングサロンでの歯磨きは500~2,000円程度なので、頻繁に通うにはけっこうなお金がかかってしまいます。愛犬の歯は自分で歯磨きできるようになった方が良いでしょう。

スケーラーを使えば自分で歯石をとれる?
スケーラーは市販されている器具です。しかし、扱い方が難しく、素人にはおすすめされるものではありません。先が尖っているので、いくら大人しい犬でも歯や歯茎、口の中を傷つけてしまう可能性があるからです。
また、スケーラーを使うと歯の表面に見えない傷がたくさんついてしまいます。この傷があると歯垢がつきやすくなります。スケーラーを使った後は人間も同じですが、歯の表面を研磨するポリッシングが必要です。歯医者が行うようなことを素人が自宅ではできないですよね。
動物病院はもちろんトリミングサロンでもスケーラーを使う場合もあるようですが、ポリッシングをしっかり行ってくれるかどうか確認した方が良いでしょう。

愛犬の歯磨きを楽しい時間にしよう

人間が毎日歯を磨くように、犬も歯磨きをして口の中を健康に保つことが大切です。ペットだとしても、歯が悪くなるとおいしく食事をすることができなくなってしまいますよね。
できるだけ早いうちに歯磨きをする習慣を身につけるためには、歯磨きの練習を楽しい時間にするのがコツです。優しく話しかけ、ご褒美をあげたり、おもちゃで遊んであげたり、歯磨きをすると良いことがある!と愛犬に覚えてもらいましょう。
愛犬にとっても飼い主にとっても歯磨きをすることが当たり前の習慣となるように、根気よく歯磨きを続けていきましょう。