トリミングやグルーミングとは?愛犬の健康のために必須のお手入れ

グルーミングとは、全身を手入れして清潔に保つことであり、その手入れの一つとして毛をカットしてきれいに整えるトリミングがあります。犬の健康を守るためにはどんな犬にもグルーミングは必須ですが、トリミングは犬種により必要性もやり方も異なります。
今回は、グルーミングやトリミングの意味や重要性を紹介します。

グルーミングとトリミングの違い

トリミングという言葉には、「刈り整える」「不要な部分を除く」という意味があります。犬のトリミングとは、「毛をカットしてきれいに整えること」です。
トリミングと似たような言葉で、グルーミングという言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。グルーミングとは「全身を手入れして清潔に保つこと」という意味です。その具体的な手入れとして、爪切りや耳掃除、肛門腺絞り等があり、トリミングもグルーミングの手入れの一つに含まれます。
トイプードルやマルチーズ等の長毛種は毛のカットが必須なトリミング犬種、柴犬やラブラドールレトリーバー等の短毛種は爪切りや耳掃除、ちょっとした毛のカットのみで良いグルーミング犬種となります。

グルーミングの内容

ブラッシング
ブラシやコーム、スリッカーで毛をとかし、毛玉を取って毛並みを整える。
毛がフェルト上になったり毛玉になったりする犬は特に重要なお手入れ。
耳掃除
犬の耳は人間の耳よりも通気性が悪く、不要な耳毛を抜くもしくはカットして耳の汚れをふき取る。
垂れ耳の犬は特に通気性が悪くなるので蒸れやすく、汚れもたまりやすいので要注意。
肛門腺絞り
肛門腺に肛門膿がたまるので取り除く。
座ってお尻を地面にこすりつけるのは肛門膿を出そうとしている行動で、出すと気分が良くなって尻尾の上がり具合も良くなる。
シャンプー
犬用のシャンプー剤で体を洗う。シャンプー後には犬用リンスを使うことも。
皮膚が弱い犬はシャンプー剤に要注意。
ノミがいる場合はのみ取りシャンプーや薬浴をする。
トリミング
毛をカットしてきれいに整える。
伸びすぎな毛や邪魔な毛はもちろん、季節や飼い主の意向に合わせて見た目にもかわいくカット。
換毛期のないシングルコートの犬種や毛の長い犬種は定期的にトリミングを。
足の裏の毛のカット
足の裏の毛は放っておくと邪魔になるほど伸びていくので、犬全般でカットが必要。
爪切り
人間と同じように爪は伸び続けるので定期的に切る。
嫌がる犬が多く、黒い爪の犬の場合は血管が見えづらいので、うまくできない場合はトリミングサロンや動物病院で切ってもらうと良い。
歯磨き
毎食後もしくは1日に1回行うのがベスト。
トリミングサロンや動物病院でも歯磨きをしてもらうことができるが、毎日のケアなので自分でできるようにすることが大切。
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日本ではグルーミングよりもトリミングという言葉が一般的
今の日本では、トリミングという言葉が浸透して、グルーミングという言葉はあまり使われていませんよね。どちらの言葉も「全身を手入れして清潔に保つ」という意味としてとらえられています。グルーミングを行っていても犬の美容室をトリミングサロンと呼ぶことが多く、店名もトリミングサロンと付いているところが多いです。

欧米ではトリマーではなくグルーマー
欧米ではトリミングではなくグルーミングという言葉を使い、日本で言うトリマーをグルーマーと呼んでいます。グルーミングの一部にトリミングが含まれるとはいえ、今の日本では一緒くたにトリミングと呼ばれることが多いですよね。
犬の美容師であるトリマーは、毛を整える以外にも全身をきれいにする施術を行っているので、どちらも同じ仕事をする人と考えて良いでしょう。日本でのトリマーは、グルーマーの和製英語と言えそうです。

犬にとってグルーミング・トリミングが必要な理由

「トリミングサロンに行くとお金がかかる」「トリミングはオシャレな犬のすること」とトリミングに関心がないと思う人もいますよね。確かに、毛の短い犬種はトリミングの必要はありません。ただし、グルーミングはどんな犬にも必要です。
トリミングサロンに連れて行くのは、美容だけでなく健康のためにも大切なことなのです。

毛を衛生的に保つため

全身を毛でおおわれている犬は、毛が人間で言う服の役割をしています。汚れた服を毎日着続けるのは気持ちが悪くて不衛生ですよね。日頃からブラッシングや定期的なシャンプーをしてあげましょう。
特に、お尻周辺は排泄物で汚れやすい部分です。周辺の毛をカットすることで汚れの付着をできるだけ防ぎましょう。目の周りの毛にも気をつけてあげてください。伸びると目に刺さって涙や目やにの原因になります。

お手入れを怠ると臭いも気になってきます。一緒に暮らす上でもきれいな愛犬の方が良いですよね。犬が不衛生だと犬自身はもちろん、人間にも病気等を引き起こす可能性があります。逆に、人間が不衛生にしているのは犬にも良くありません。いつでも完璧にきれいにしていなければいけないというわけではありませんが、お互いが気持ち良く暮らしていけるように衛生面も気を付けましょう。

ケガを防止するため

犬はシングルコートや短毛種でも足の裏の肉球の間に生えた毛が伸びていきます。毛が伸びると、滑って足に負担がかかったり、転んでケガをしたりすることもあり得ます。
また、犬は足の裏で汗をかくので、毛が伸びた状態だと菌が繁殖しやすい状態になり不衛生です。

爪も伸びるので、必ず切る必要があります。爪が伸びていくと歩きにくく、変な歩き方になって骨格が歪むこともあり得ます。更にそのままにしていると巻き爪になって肉球に突き刺さってケガをしてしまいます。
爪が伸びるのを放置していると、血管や神経も一緒に伸びていきます。適正な位置以上に爪が伸びてしまったら、血管や神経を切る必要があり、血が出て痛い思いをすることになってしまいます。1本の爪ならまだしも、全ての足の爪を痛くさせるなんて恐ろしいですよね。愛犬に辛い思いをさせる前に、爪はこまめにチェックして切ってあげてください。
もしも血管や神経を切らなければならないほど爪が伸びてしまったら、自分で切るのは難しいのでトリミングサロンもしくは動物病院に連れて行きましょう。

病気を防止するため

毛の手入れを怠ると、毛玉になったり汚れが固まったりして皮膚に湿気がたまりやすくなります。蒸れて汚れて雑菌が繁殖すると臭いのもとにもなってしまいます。放っておくと皮膚炎や皮膚病等の病気を引き起こします。
また、肛門膿がたまっているのを放置すると破裂したり細菌感染からの炎症等が起こるので、定期的にケアすることが重要です。

ノミやダニ等の害虫を防ぐため

特に長毛種や毛量の多い犬は、ノミやダニなどの害虫がくっつきやすく、隠れられる場所も多くなります。トリミングしてある程度毛を短くすることで害虫がつきにくくなり、ついても発見しやすくなるでしょう。
とはいえ、害虫がつくと見つけるのが困難なので、予防・駆虫薬も使うのがおすすめです。

熱中症を防ぐため

毛量の多い犬種は、毛を短いサマーカットにすることで熱中症を防ぐ効果があります。毛を短くすることで、通気性を良くして体温で蒸れを抑えて暑さをやわらげます。
ただし、暑そうだからと言って毛を短くしすぎると、紫外線やアスファルトの照り返しが直接皮膚に当たるようになってしまいます。毛は皮膚を守る役割をしているので、必要な毛はしっかり残してカットしましょう。

見た目を美しくする、美容やオシャレのため

犬にはそれぞれの犬種らしさを表す指標「スタンダード」があります。スタンダードに沿ったトリミングを行うことで、その犬が本来持つ魅力を引き出すことができるのです。
また、犬の毛には、犬種の差はもちろん毛質や毛量等の個体差があるので、スタンダードにとらわれず個性を活かしたカットで魅力を発揮することもできるでしょう。
ただ、愛犬はファッションのためにいるのではないですよね。オシャレを追求しすぎて愛犬に負担をかけないように気を付けてください。トリマーと相談して、愛犬のかわいさを最大限に引き出すトリミングをお願いしましょう。

トリマーは第二のドクター!?
グルーミングやトリミングをする際、犬の全身をよく見て触ることになります。トリマーは、毎日何頭もの犬を注意深く見て触っているので、日々の触れ合いではなかなか気づかないような異常にも気づくことができます。
まるで獣医師の触診のようですよね。皮膚に異常があったりしこりができていたりと、ガン等の恐ろしい病気も早期発見できる可能性があるでしょう。それがトリマーが第二の医者と呼ばれる理由です。
日頃から自分で愛犬をグルーミングしている人は愛犬の異常にも気づきやすいです。自分でも愛犬をチェックしつつ、たまにはプロの手にお願いするのも良いのではないでしょうか。

トリミングは犬種によってやり方や重要度が異なる

犬はシングルコートとダブルコートの犬種がいて、それぞれトリミングの仕方は異なります。特に、シングルコートの犬種はトリミングが重要です。

シングルコートの犬種
毛が1重で抜けにくく伸びていく。
プードル、マルチーズ、パピヨン、ヨークシャテリア、ミニチュアシュナウザー、ビションフリーゼ、シーズー等。
毛が伸びていくので愛犬が不便のないようにトリミングが必要。
放っておくとぼさぼさになってしまい不衛生になるため、きれいな毛並みを保つためにも定期的なトリミングを。
ダブルコートの犬種
毛が上毛と下毛の2重になっていて、一定の長さで保たれるが、下毛は換毛期に生え換わる。
ミニチュアダックスフンド、柴犬、ポメラニアン、ラブラドールレトリバー、フレンチブルドッグ、ボーダーコリー、秋田犬、パグ等。
換毛期の抜け毛はかなりの量だが、日々のブラッシングをしていればトリミングはほとんど不要。
ポメラニアン等の長毛種はトリミングをすることでさらに美しくなる。

どの犬種でもグルーミングは必須です。足の裏の毛のカット、できればお尻周辺等の汚れやすい部分の毛はカットしてあげましょう。
トリミングの仕方としては、犬にはそれぞれの犬種でスタンダードがありますが、それは人間が決めたものです。ドッグショーに出すようなことがなければ、トリミングの形に正解はありません。ペットとしての愛玩犬であれば、飼い主の好みやお手入れのしやすさでトリミングすると良いでしょう。
ただし、愛犬が生活する上で不便そうであったり、短くしすぎて悪影響があったりするカットはやめましょう。あくまでも健康を重視した上でトリミングしてくださいね。どんな形ができて、あっているのはどんな形か、トリミングのプロであるトリマーに相談してみると良いでしょう。

チワワはシングル?ダブル?ミックスは?
チワワを飼ったことがある人は、抜け毛が多いという人もいれば、抜け毛はほとんどないという人もいます。何故そんなにも違いがあるのかというと、チワワはシングルコートもダブルコートも存在するからです。
温暖なメキシコが原産のチワワは、本来シングルコートのスムースコートでした。しかし、ロングコートのチワワも繁殖させていったところ、シングルコートとダブルコートの両方のタイプが混在していったようです。
違う犬種の掛け合わせであるミックス(雑種)犬もチワワと同じように、シングルコートとダブルコートが組み合わさっていることがあります。
そのため、チワワやミックス犬は、シングルコート、ダブルコートのどちらかに偏っていたり、どちらの特徴も持っていたりすることがあります。チワワやミックス犬を飼いたいけど抜け毛が心配という人は、お目当ての犬がどんな血統を持っているか確認してアドバイスをもらうのがおすすめです。
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トリミングサロンや動物病院に行く場合

ブラッシングやシャンプー等の日々のお手入れは自分でやっている人も少なくないですよね。全身の毛をカットして整えるトリミングとなると、素人では難しいものです。トリミングはプロのトリマーにお願いすると良いでしょう。
トリミングサロンや動物病院で施術を受けるには、狂犬病の予防接種は当然として、混合ワクチンの接種を行っていることが条件となる場合がほとんどです。証明書の提示を求められることもあります。
ノミやダニを落とすために施術してもらいたい思うこともあるかもしれませんが、トリミングサロンではノミダニの予防を行っていなければ施術を断られてしまうことが多いです。もし愛犬にノミやダニがついていたら、動物病院で駆虫してからトリミングをお願いしましょう。
ノミやダニは散歩で連れてきてしまうことも多いので、できれば定期的にノミダニの予防・駆虫薬を使用した方が安心です。

トリミングサロンや動物病院はたくさんの犬が出入りする場所です。せっかくきれいにしてもらおうとトリミングをお願いしたのに、ノミをつけて帰ってきた!ということになったら嫌ですよね。他のお客さんに迷惑にならないようにマナーを守りましょう。

施術内容と料金

トリミングサロンや動物病院によって施術内容や料金は様々です。犬種や体の大きさ、毛の量によっても変わってきます。
シャンプーとちょっとしたお手入れをするシャンプーコース、シャンプーコースにトリミングをプラスしたシャンプーカットコースの2つのコースが定番です。シャンプー単体に爪切りや足の裏の毛カット等の細かなことはオプションで付けたり、それらのちょっとしたお手入れは単体メニューとして施術できたりします。
トリミング料金の相場(2018年に地方店の料金を参考)を紹介するので目安としてみてくださいね。

シャンプーコース
超小型犬:2,500円
小型犬:3,500円
中型犬:4,500円
大型犬:6,000円~
シャンプーカットコース
超小型犬:3,500円
小型犬:5,000円
中型犬:7,000円
大型犬:9,000円~
単体・オプションメニュー
シャンプー:1,500円
特別シャンプー(薬浴、バブルバス、マッサージ等):シャンプーに+500円~
爪切り:500円
足裏カット:500円
足回りカット:500円
ひげカット:500円
耳掃除:500円
肛門腺絞り:500円
歯磨き:500円

上記では犬のサイズで参考料金を表示しましたが、大きさではなく種類によって料金が決められているところも多いです。例えば、超小型犬でも毛量の多いポメラニアンはシャンプーもカットも料金が高くなるでしょう。
詳しくはトリミングサロンや動物病院に直接聞いてみてくださいね。

愛犬のためにグルーミングやトリミングをしよう

どんな犬でも爪や足の裏の毛を切ったりシャンプーをしたりするグルーミングは必須ですが、トリミングは、全身を清潔に保つためのグルーミングのうちの一つのお手入れです。
トリミングは、犬種によっては必ずしも必要なお手入れではありませんが、美容やオシャレだけでなく、健康にも関わるのでできれば定期的に行うようにしましょう。
トリミングサロンでプロのトリマーにお願いすることにより、愛犬の毛や皮膚等、全身をチェックしてもらうことができます。普段から自分でこまめにグルーミングを行うことで、愛犬の異変に気付きやすいですよね。愛犬が清潔で健康に暮らせるように、必要に応じたグルーミングやトリミングを行いましょう。