屋外のビオトープで生き物を飼おう!メダカやタニシなど初心者におすすめの水生生物

自分の手で小さな自然を作り出すビオトープ、メダカやエビ、貝等を飼う方法の一つとしても人気です。水槽で飼育するのとは違い、揃える道具が少なく、安価な容器でもできるため費用も抑えられます。また、屋外飼育に適した生き物は、自然から採集してくることもできるので、費用は0で楽しい体験ができるでしょう。
今回は、ビオトープ初心者でも飼いやすいビオトープに適した生き物を紹介します。ペットとしてビオトープで生き物を育ててみませんか?

水生生物の種類

ビオトープは、屋外で自然の状態に追求しながら生き物を飼う方法です。水槽での飼育とは違い、基本的にはフィルターやエアポンプ等を利用しません。そのため、水質の変化に強く水を汚しにくい生き物を選ぶ必要があります。
エサの食べ残しや人工飼料を食べたフンにも養分が多くなるので、水が汚れる原因になります。できるだけエサを与えなくとも、自然に発生したコケやプランクトンを食べる小さな生き物が良いでしょう。大きな生き物はそれだけエサが必要になり、フンの量も増えます。
ビオトープの理想は、できるだけ手の加えない自然な状態です。そんな状態に近づける環境整備はもちろんですが、日本の屋外飼育環境を快適と思ってもらえる生き物を選ぶことも大切です。

メダカ

ビオトープで飼える生き物として、最もポピュラーな生き物です。丈夫で水温の変化にも強く、ビオトープ内で見栄えもします。実はメダカにも様々な品種がいて、カラーも豊富です。種類によってはビオトープには適さないメダカもいますが、どんな種類にしようか迷うのも楽しいしょう。
メダカの寿命は自然界で1~2年、水槽等で管理された飼育環境下では3年以上になることもあります。屋外飼育のビオトープの場合、自然界の寿命に近いと考えると、長くビオトープを続ける場合、繁殖をさせて命を繋いでいく必要があります。メダカの産卵や稚魚の育成についても勉強していきましょう。

ニホンメダカ
昔から日本の小川や水田等に生息しているメダカで、ニホンメダカとはミナミメダカとキタノメダカの総称。
日本全国の自然環境に適応して暮らしているだけあって、体は丈夫でビオトープにも向いている。
近年、生活排水等による自然環境の悪化や外来種の生き物の影響等で数が激減し、絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に指定された。
絶滅危惧種に指定されていても、飼育・繁殖は可能だが、販売目的の採取は禁止されているためペットショップ等での販売はない。※絶滅危惧種に指定される前の2003年5月以前から飼育・繁殖していたニホンメダカは稀に販売されているようで、ショッピングサイト最大手のAmazonではミナミメダカが販売されていた。(2018年6月22日現在)
クロメダカ
野性のニホンメダカに近い種類で、ペットショップやホームセンター等で販売されているメダカの中では最も丈夫で飼いやすい。
光に当たると体がきらきら光るが、上から見ると色が黒っぽくて目立たないため、観賞用としては物足りないかもしれない。
水槽のガラス越しで横から見ると、明るい体色が目立つ。
価格:1匹80~130円
ヒメダカ
クロメダカの突然変異で色素が抜けて緋色になった種類。
クロメダカと比べると性質が少し弱いが十分丈夫。
上からでもきれいな色が目立つので観賞用としても楽しめる。
価格:1匹50~70円
アオメダカ
光の当たり方によって体が青色に輝く。
ヒメダカと同じくらい丈夫で、初心者にも飼いやすい。
価格:1匹100~150円

以上のメダカは初心者でも飼いやすい種類です。まずは丈夫なメダカをビオトープで飼ってみて、だんだん慣れてきたら他の品種に挑戦してみると良いでしょう。
この他にも、体形が丸く膨らんでいたり、ラメが入っていたりと様々な種類のメダカがいます。屋外のビオトープでは難しい種類もいるので、メダカにはまったら水槽での飼育もしたくなるかもしれませんね。

メダカはボウフラを食べる!
ビオトープは、基本的には水がただ溜まっている状態です。動かない水には、蚊が卵を産んでボウフラが湧くには絶好の場所…そこで、メダカの出番です!
メダカはボウフラの絶好のエサとなります。ただし、メダカはボウフラを丸呑みするのですが、小さいメダカはそれができません。逆に、本当に小さい稚魚はボウフラに食べられることもあるようなので、稚魚は別の容器で育てる等、注意が必要です。
水量に対してメダカが少ない場合、ボウフラの発生の方が早くて、メダカの捕食が追いつかないこともあります。ボウフラを退治するためには、一つのビオトープにある程度の数のメダカが必要でしょう。また、エサをあげ過ぎているとお腹がいっぱいでボウフラを食べないということもあるので、夏場のエサを与える量は気を付けましょう。
水が動いていれば、蚊は卵を産み付けられないので、ポンプを入れて水を常に動かすことでもボウフラの発生を防ぐことができます。ただ、自然に近いビオトープを作りたいと考えるなら、ぜひメダカを飼ってみてください。ウォーターガーデニングとして、睡蓮等の水生植物を育てたい人も、メダカを入れるとボウフラ対策になるので、飼う人が多いようです。

ニホンメダカを守るために
全国各地では、野生のニホンメダカの保護活動が行われています。ニホンメダカを採集して飼う場合、むやみに環境を荒らしたり乱獲したりしてはいけません。その場所にいるメダカを少しだけ家に連れて帰り、繁殖させていくと良いでしょう。
また、同じメダカだからと言って、家にいるメダカを自然に放流するのも良くない行為です。ペットショップ等で売っているメダカ、特にクロメダカは日本メダカにDNAが近いとはいえ、違う品種です。放流してしまえば違う種類のメダカがニホンメダカと交配して、その地域固有のニホンメダカが絶滅してしまいます。

色の違うメダカを混ぜると色が悪くなる
同じビオトープの容器の中で色々な色の種類のメダカを一緒に入れていると、違う色の種類同士の子どもが生まれるため色が混ざって悪くなります。交配を繰り返しているとだんだんと黒メダカの数が増えていくようです。メダカの品種を維持したい場合、違う種類のメダカは混ぜない方が良いでしょう。

タニシ

タニシは、優れた水質浄化能力を持つ生き物です。掃除屋と呼ばれ、容器の側面についたコケやメダカのエサの食べ残しやフン等を食べて濁った水をきれいにしてくれます。植物プランクトンが大発生したグリーンウォーター状態の水槽でも、タニシが透明にするほどです。
寿命は5年ほどで、しっかり水質があっていれば越冬もできるため、秋田でも十分飼うことができます。

ヒメタニシ
殻高約3.5cmで、日本全国に広く分布し、水田でよくみられる。
日本に住むタニシの中で最も多様な環境に適応でき、水の汚染にも比較的強くて丈夫。
コケや藻を食べるだけでなく、フンは水質悪化養分を出さないので水質浄化能力が高い。
アクアリウムでも良く飼育される人気な種類。
オオタニシ
殻高約6.5cmの大き目のタニシで、北海道から九州に分布し、水田でも見られるが水質の安定した池沼や湧水などを好む。
酸素不足や水質が悪化すると水面付近に近づいてきて、アンモニアや亜硝酸塩が多くなると空を閉じる性質があり、よく観察することで水質の指標になる。

この他にも、日本全国に分布しているマルタニシ、琵琶湖の身に生息しているナガタニシがいますが、ビオトープでは上記で紹介したタニシがおすすめです。ビオトープでは、とろろ昆布上のアオミドロが大敵となりますが、タニシはそれをよく食べてくれる強い味方です。ビオトープを始めたらタニシも入れてみると良いでしょう。

気を付けたい貝
川や田んぼ等から採集してくる場合、タニシではない他の貝に気を付ける必要があります。飼っていてもいいのですが、メリットよりデメリットの方が大きく、飼育を避けられている貝です。

ジャンボタニシ
タニシによく似た外来種で、正式名称はスクミリンゴガイ。
ジャンボタニシと呼ばれるように50~80mmにもなる大型の貝で、主に田んぼに生息する。
大きいので見た目に少しグロテスクで、ピンク色の卵も気持ちが悪いと思う人が多い。
巻貝としてはとても動きが早く、雑食性なので水草も食べられてしまう。※稲を食い荒らして害を出すほど。
サカマキガイ
5mm程度の小さな貝で、水面を移動することができる。
多くの貝は右巻きなのに対し、左巻きになっているのが特徴。
基本的には河川に生息しているが、都会の汚染された水でも生きられるほど適応能力が高い。
特別悪さをするわけではないが、タニシほどの水質浄化能力はなく、雌雄同体で爆発的に増えるのでゴキブリと呼ばれることも…
買ってきた水草についていることも多いので、ビオトープで買いたくない場合は水草を良く洗うと良い。

タニシは卵胎生のため、卵を産まずに、メスから直接稚貝が生まれます。もし、ビオトープ内に魚のものではない不審な卵を見つけたら、それは別の貝がいるということかもしれません。増え過ぎた貝や卵は景観を悪くするので、いずれ飼っていた貝がタニシではないと気づくでしょう。

エビ

タニシと同様に、エビもコケや藻を食べてくれる掃除屋として活躍します。人気でおすすめのエビは、ヤマトヌマエビとミナミヌマエビです。昔から日本の川や池沼等に生息し、採集することもできます。メダカと同じ環境で飼うことができるのでビオトープにもピッタリです。メダカの稚魚を襲って食べるというようなこともほぼありません(死体や死ぬほど弱っている場合は食べられることもある)。
エビは酸欠に弱いのでビオトープの大きさには余裕を持ちましょう。

ミナミヌマエビ
体長:2~3cm
寿命:1~2年
繁殖:水質が合えばけっこうな勢いで繁殖をする。(稚エビの隠れ家となるようにシェルターや水草等を入れた方が良い)
メリット:繁殖が簡単で容易に増える。小食なのでほとんどエビ用にエサやりは不要。
デメリット:体が小さく小食で掃除能力も小さい。増え過ぎることもある。
ヤマトヌマエビ
体長:3~6cm
寿命:2~3年
繁殖:汽水域(淡水と海水がまじりあう場所)でしかほぼ不可能。(繁殖はできないと考えた方が良い)
メリット:体が大きい分、コケ取り能力が高い。1匹でミナミヌマエビ10匹分程度の能力!
デメリット:繁殖が難しく、ビオトープでは不可能。コケやメダカのフン等があまりない場合、きちんとエサを与える必要がある。

どちらも日本に生息するエビなので、水面に氷が張っても越冬できます。冬眠しないので少しばかりエサが必要ですが、メダカと一緒に入れていれば、メダカのフンや自分のフンで冬を乗り切れます。エビ単体の場合、2~3日に一度ザリガニのエサ等を数粒入れてあげると良いでしょう。
ビオトープでエビを飼い続ける場合、繁殖が簡単なミナミヌマエビを入れて命をつなぐか、コケ取り能力の高いヤマトヌマエビを定期的に入れて行くことになります。どちらもビオトープの大きさに対して数が多くなると、酸素やエサ不足になったり、フンで水質悪化になったりすることもあるので、飼育数には要注意です。

野性の生き物を採集して飼うには

小川や池、用水路等から野生の生き物を採集することは、法律で禁止されているわけではありません。絶滅危惧種に指定されたニホンメダカでも、販売目的でなければ採集しても問題ありません。
ただし、採集する場所には気を付けてください。保護区に指定されている地域であれば採集してはいけません。田んぼ等であればその土地の持ち主に許可を得て採集しましょう。

ニホンメダカを採集するときはカダヤシに要注意

ニホンメダカによく似た外来種のカダヤシという魚がいます。カダヤシは、ニホンメダカとよく似ていて、背中に筋のような黒褐色がなく、ヒレが丸くなっています。
カダヤシは北アメリカ原産で、1913年に蚊の天敵、蚊絶やしとして移入されました。2006年2月から特定外来生物に指定され、飼育、運搬、輸入、訪中、販売、譲渡等が法律で禁止されています。
法を犯せば懲役や罰金もありますが、もし間違えて採ってしまってもその場で放すことに罰則はありません。連れて帰ることは運搬に当たるので、カダヤシかどうかよくわからなければその場で放流すると良いでしょう。とはいえ、外来種は本来の環境を侵略するので、かわいそうではありますができれば殺処分をという意見もあります。

尚、カダヤシは5℃以下の低温には弱いため、環境によっては越冬できずに全滅してしまうようです。そのため、秋田のような寒冷地では見かけることはないかもしれませんね。

もしも、飼いきれなくなったら

生き物を飼うからには、最期まで面倒を見るという覚悟で飼い始めましょう。もしも、繁殖しすぎたり、引っ越しで飼える環境でなくなったりしても、自然に放すことは避けてください。いくらとってきた場所、同じ生き物がいる場所だからと一見同じに見えても、その場所による遺伝子や種の多様性があるのです。
どうしても自分で面倒が見切れなくなった場合、知人やペットショップ等で引き取り手を探しましょう。ただし、絶滅危惧種に指定されているニホンメダカは、各自治体の条例等で規制されている場合があります。採集してきたニホンメダカが飼いきれなくなった時は、自分の住んでいる自治体にどうすればいいのか問い合わせてみると良いでしょう。

ビオトープで生き物を飼う前に

ビオトープで生き物を飼うと決めたなら、飼う生き物の性質やビオトープとの相性を考える必要があります。ビオトープをやりたいから生き物を飼ってみようという場合には問題ありませんが、飼いたい生き物がいるからビオトープを始めようという場合は注意が必要です。
メダカを飼いたいからビオトープというのはメダカにとっても良い環境となります。しかし、グッピーを飼いたいから手入れがいらなさそうなビオトープで、というのは無理があります。グッピーは熱帯魚なので、夏は良くとも水温が下がって冬になると死んでしまうでしょう。飼いたい生き物が先にいる場合、生き物に合わせて飼い方や環境を考えてください。
自分で最後まで飼うことができる生き物を選んで、ビオトープを楽しみましょう。